海外へ意匠出願するには?

海外へ意匠出願するには

日本国内の意匠権は日本のみにしか権利が及びません。そのため、プロダクトデザインを海外展開するのであれば、対象となる国へ意匠権としての権利化を検討する必要があります。海外での模倣品の被害を防ぐためにも、海外で意匠権として権利を取得することは大切です。

そこで、海外へ意匠出願する際は、大きく3つの方法として、①直接(パリルート)出願②ハーグ(国際)出願③欧州共同体意匠出願の方法がありますので、ご紹介します。

また、日本での特許出願を基にして海外へ意匠出願するには、日本の意匠出願日から6ヶ月以内に海外へ意匠出願の手続きをしなければならないため、注意が必要です。

①直接(パリルート)出願

直接(パリルート)出願(以下、直接出願)は、出願人が代理人に依頼し、海外の各国へ直接意匠出願する方法です。日本で意匠出願してから6ヶ月以内であれば、その意匠出願を基礎出願として海外へ出願することが可能です。

直接出願する場合、各国の現地代理人を通じて出願し、その後各国ごとに審査がされます。意匠権を取得したい国に直接出願をするので、イメージがしやすいかと思います。

②ハーグ(国際)出願

ハーグ(国際)出願(以下、ハーグ出願)は、日本の特許庁またはWIPO国際事務局に1件出願することで、 複数の国(締約国・加盟国)へ出願した場合と同様の効果が得られます。
 ※2019年4月現在:68か国(ハーグ協定の締約国)

出願書類は所定の様式に基づき、英語またはフランス語、スペイン語のいずれかで作成しなければなりません。

ハーグ出願後、WIPO国際事務局は方式審査において、出願書類に不備がなければ国際登録がされます。また、国際登録から6ヶ月後に、国際登録の内容が公開されます。
(各指定国は、国際公表の日から定められた拒絶の通報期間内であれば、国際登録の効果を拒絶できます。 )

意匠としての権利は、国際登録の日から5年間有効で、その後5年ごとの更新が可能です。

③欧州共同体意匠出願

欧州共同体意匠は、欧州連合知的財産庁(EUIPO)に1件出願することで、 EU加盟国の全加盟国に意匠権の効果が及びます。
 ※2019年1月現在:EU加盟国は28か国 。

欧州共同体意匠は、下記の通り出願をすることが必要な登録欧州共同体意匠(RCD) と、出願をすることなく一定の要件で保護される無登録欧州共同体意匠 (UCD) の制度があります。

・登録欧州共同体意匠(RCD)
・無登録欧州共同体意匠 (UCD)

登録欧州共同体意匠(RCD) について、以下に説明をします。

欧州共同体意匠出願は、1件の出願でEU加盟国の全加盟国を一括して保護ができ、各国ごとへの出願手続きや翻訳、現地代理人などが不要となります。また、ロカルノ分類(意匠の国際分類 )が同一な複数の意匠であれば、1つの出願で意匠出願することができます。

ただ、意匠登録が無効や取消となってしまうとEU加盟国全域に適用され、意匠としての権利は存在しなかったこととなりますので、注意が必要です。また、意匠権の譲渡は、欧州共同体一括の譲渡となります。

なお、権利期間は出願日から5年となりますが、4回まで更新することができます。
(最長で25年間保護)

直接出願とハーグ協定、欧州共同体意匠出願の比較


世界の意匠出願件数(2018年)

日本だけでサービス展開をするのではなく、プロダクトデザインをアジアや世界へ展開していくのであれば、意匠は模倣されやすいため、その対象となる国に意匠権として権利化することを検討することは大切です。

そこで、海外における意匠出願件数の統計をご紹介します。

世界知的所有権機関(WIPO)のレポートによると、2018年世界全体で意匠出願件数は約100万件となっています。

最も意匠出願をしている中国では約70万件の意匠出願がされ、以下、EUIPO、韓国、米国、ドイツの順で続きます。中国が全体をけん引し、アジアが商標出願でトップになっています。

なお、日本での1年間の意匠登録出願は、以前、以下の記事にてご紹介していますが、約3万件であり、中国とは20倍以上の出願件数の差があります。

そのプロダクトデザイン、製品化前に公にしていませんか?

意匠権を取得すれば、海外の模倣品への対応として、模倣品の製造・販売の差止め、税関での差止めなどが可能です。また、各国の権利者の意匠権の侵害をしないためにも、その国で意匠権を持っている他者がいないか、 先行意匠調査をすることも重要です。

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