海外へ商標出願するには?
海外へ商標出願するには
日本国内の商標権は日本のみにしか権利が及びません。そのため、海外で商品やサービスを展開するのであれば、対象となる国においても商標出願をし、権利化することを検討する必要があります。
日本で商標出願して公になっている場合、その商標を海外で先に他者が商標登録してしまうことがありますので、早い段階での対応が大切です。
そこで、海外へ商標出願する際、大きく3つの方法として、①直接(パリルート)出願と②マドプロ(国際)出願、 ③欧州連合商標(EUTM)出願の方法をご紹介します。
①直接(パリルート)出願
直接(パリルート)出願(以下、直接出願)は、出願人が海外の各国へ直接商標出願する方法です。日本で商標出願をしてから6ヶ月以内であれば、その商標出願を基礎出願として海外へ出願することが可能です。
直接出願する場合、各国の現地代理人を通じて出願しなければならず、審査はその各国ごとにされます。商標権を取得したい国に直接商標出願をするので、イメージがしやすいかと思います。
②マドプロ(国際)出願
複数の国に商標出願する予定の場合、費用や手続きの観点からも、マドプロ(国際)出願(以下、マドプロ出願)を検討することになるかと思います。
マドプロ(国際)出願(以下、マドプロ出願)は、日本の特許庁に1つの出願書類を提出することで、複数の国(締約国・加盟国)へ出願したことと同様の効果が得られます。
※2019年8月現在:105か国(マドリッド協定議定書締約国)
ただ、マドプロ出願の制度を利用するには、日本の特許庁において、商標出願をしているか、商標登録がされている必要があります。
(マドプロ(国際)出願は、日本の商標出願または商標登録と同じ商標である必要があります。)
マドプロ出願は、所定の様式に英語で作成すればよく、各国毎の翻訳や現地代理人が不要となりますので、費用や手続きの削減が可能です。なお、マドプロ出願後は、各指定国毎に審査が行われます。
③欧州連合商標(EUTM)出願
ヨーロッパを中心に商標出願を予定する場合、欧州連合商標(EUTM)出願(以下、欧州連合商標出願)を検討することになるかと思います。
欧州連合商標出願は、欧州連合知的財産庁(EUIPO)に1件出願することで、 EU加盟国の全加盟国に効果が及びます。
※2019年1月現在:欧州連合商標の加盟国は28か国 。
出願は、欧州連合知的財産庁へ直接、または各加盟国の特許庁経由かを選択できます。ただ、EU加盟国の中で1か国でも先行の登録商標があると、その登録商標との類似を理由として、欧州連合商標登録としての登録を受けることができないため、注意が必要です。
直接出願とマドプロ出願、欧州連合商標出願の比較
世界の商標出願件数(2018年)
日本だけでサービス展開をするのではなく、アジアや世界へ展開していくのであれば、その対象となる国に商標権として権利化することを検討することは大切です。
そこで、海外における商標出願件数の統計をご紹介します。
世界知的所有権機関(WIPO)のレポートによると、2018年世界全体で 1,430万区分、商標出願件数は約1,090万件となっています。
世界の特許出願件数が約330万件でしたので、特許と比べ商標は約3倍もの件数が出願されています。
区分数では、中国が約740万区分での商標出願がされていて、以下米国、日本、欧州連合、イラン・イスラム共和国の順で続きます。特許も中国が最も特許出願していましたが、商標も同様に中国が最も商標出願しています。
なお、日本での1年間の商標登録出願は、以前、以下の記事にてご紹介していますが、約18万件です。
海外展開を検討される際は、 中国、米国、日本、欧州連合、イラン・イスラム共和国といった五庁のある国・地域に限らず、サービス展開を予定する国・地域の商標の確認は大切です。
商標出願も大事ですが、プロダクト・サービス名が各国の権利者の商標権の侵害をしないよう、その商標権を持っている他者がいないか、 先行商標調査をすることも大切です。